昨年の8月に、恐竜化石が多数産出している丹波市に分布する篠山層群下部層(約11000万年前)から、カエル類の全身骨格化石が発見されたことを公表しました。このカエル類化石の保存状態は極めて良好で、指骨などの一部が欠損しているものの、ほぼ全身の骨格要素が揃っており、生きていた当時の様子が化石から見て取れます。このような化石は世界的のも例が少なく、カエル類の進化の過程を研究する上で極めて重要な標本です。そこで私は、この化石の産出報告とこれまでの研究成果を10月に米国で開催された米国古脊椎動物学会第70回例会で発表してきました。

 

 

ikedaNov1.JPG                              (街の風景)

 

米国古脊椎動物学会(Society of Vertebrate Paleontology)は、年に一度例会を開催します。その例会には、米国の研究者のみならず世界中の研究者が集うため、実質的には古脊椎動物学の国際大会となっています。昨年は英国のブリストルで開催されましたが、今年は米国のペンシルバニア州ピッツバーグで四日間に渡って開催されました。今回の大会には、約20ヵ国、総勢約900名の研究者が参加し、700を超える研究発表がおこなわれました。

 

 

ikedaNov2.JPG                             (会場の様子)

 

例年この大会では多数の研究者が発表するため、研究内容により選別され複数の会場にて発表が行われます。発表は口頭発表とポスター発表に大きく分かれており、口頭発表が四会場、ポスター発表が大きな会場一つで行われます。大会参加者は、事前にプログラムを調べ自身の興味のある演題を聞きもらさないように多数の会場を行き来します。

 

 

 

ikedaNov3.JPG                            (ポスター発表)

 

今回私は、上の写真のようにポスターで研究成果を発表しました。このポスター会場では、お酒やスナックが振舞われ、世界中の古生物学者が交流を深め、研究についての情報交換が行われます。お酒を飲みながらの発表は、日本国内の学会ではあまり馴染みがないですが、少しお酒が入ることで、国籍を超えてスムーズにお互いが打ち解けることが出来るようです。

 

発表の成果も上々で、カエル化石研究の第一人者で中国科学院古脊椎動物古人類研究所(IVPP)の館長である王原博士から、「非常に重要で興味深い化石だ。今後双方の研究成果を議論するために密に連絡を取り合っていこう」とコメントを頂きました。今年も12月中旬から第五次発掘が行われます。恐竜だけでなく、カエルのような小さな生物も多数産出すると思います。今後も随時、調査・研究活動を報告しますのでご期待ください!

 

池田 忠広(自然・環境評価研究部)

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