連載1はこちら →  http://hitohaku.jp/blog/2010/03/post_634/

連載2はこちら →  http://hitohaku.jp/blog/2010/03/2_6/

 

 

 

 吾輩は、時々、そっと虫籠から抜け出し、館内を見てまわる。2階には、メインの企画展示があり、その中には世界のぎっちょん君という日本では考えられない巨大なナナフシなどの吾輩の仲間の標本が展示してあり、吾輩たちの美しい鳴き声や写真、昆虫写真家として有名な栗林慧氏の瞬間写真などもある。吾輩はバッタの飛ぶ瞬間の写真とカブト虫の脚をあげてのオシッコの写真がお気に入りである。
世界のぎっちょん君 

 


 そんなある日のこと、その栗林慧さんが長崎からはるばるやって来るというではないか。吾輩の心は躍った。写真撮影の思い出を語る講演会と吾輩たち虫族の写真撮影の手ほどきを子どもたちにする「昆虫写真であそぼう!」というぜいたくなイベント。この企画は、あの小柄な白髪の学者風の男、大谷剛研究員が栗林さん家の居候・・・いや客分だったのが縁で実現したのである。吾輩はいつも以上に顔をゴシゴシして男に磨きをかけ、その瞬間を待った。カシャ!「やった。栗林さんに撮ってもらった!」と吾輩は叫んだ。その写真は今、吾輩の虫籠に飾ってある。吾輩の宝になったのである。それにしても、ただでさえ格好いい吾輩を一層格好よく切りとる技術は感心せざるを得ない。吾輩だけでなく参加した子どもたちも直接指導に大はしゃぎで、最後はサイン大会となったのである。
撮影大会   記念撮影

 

 
 それから、博物館の定番といえる標本づくりのセミナーもやっている。大谷剛研究員は根っからの昆虫少年で、標本づくりになると目がキラキラしてまぶしい。たくさんの子どもたちが吾輩たち鳴く虫族をきれいな標本に仕上げていくのは複雑な気持ちであるが、その子どもたちの目もキラキラして美しい。また、この大谷研究員は鳴く虫の聞き分けセミナーもやっている。「きんひばり」はそのセミナーを修了した鳴く虫インストラクターだったのである。夏の夜、鳴く虫の声の聞き分けをしながら、虫を捕獲する「きんひばり」の面々の顔もまた、キラキラ光り輝いているのである。

昆虫標本づくり実演コーナー

 

     ・・・・・・・つづく

鳴目 虫石(なくめ ちゅうせき)

Copyright © 1995-2014, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo, All Right Reserved.