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しばらく時がたち、吾輩が夢中でキュウリを食べていると、ひとはくサロンに強大な白いかたまりが運ばれてきた、それは、6mはあろうかという巨大な白いキリギリス。兵庫県立美術館の謎の造形師Y・フジワラの作品で、何やら黒い帽子をかぶった怪しげな着物姿の男と小柄な白髪の学者風の男が、例の「きんひばり」のメンバーと巨大キリギリスを囲み、何やら相談している。そこに黒いビニール袋をかぶった子どもたちがたくさん集まってきて、ペンキまみれになりながら、巨大キリギリスに色を付け始め、なんともまあカラフルな巨大キリギリスが誕生した。それにしても吾輩とは格好よさには足元にも及ばぬこっけいなキリギリスである。どうもこの巨大君が展示のシンボルモニュメントになったようである。
他にも、フロアスタッフと称する美しきマドンナたちが演じる「ススキ高原のオーケストラ」というデジタル紙芝居もある。これには吾輩も少し登場するようであるが、吾輩は女性に囲まれると緊張してしまう性分なので、まだ見ていない。サロンには、ぎっちょん君ハウスという虫の声の聞き分け体験ができる黒テントやバッタロデオと称する馬のようなバッタ風乗り物や人間がキリギリス族になる「ぎっちょん君変身コーナー」などがあり、つい先日もラジオ関西で喋ることを生業にする林真一郎という男が現れ、熱心にキリギリス族に変身し、仮面ライダーのようにバッタロデオに乗って楽しんでいた。
驚いたことに、岡山からきた6人の女子大生たちもハチやキリギリス、テントウムシに変身し「チョー楽しい!」と騒いでいた。どうやら、人間たちにとって我ら虫族に変身することはとても楽しいようで、ほとほと人間というものの不思議さを感じぜずにはいられないのである。
・・・・・・・つづく 鳴目 虫石(なくめ ちゅうせき)